著者:砥上裕將
主人公の青山霜介は、友人古前の紹介で、あるアルバイトに参加する。
そこで水墨画の巨匠、篠田湖山に出会い、水墨画の世界へと足を踏み入れることに。
両親を事故で亡くしたことがきっかけで、自分だけの真っ白な世界に閉じこもりがちだった青山。
水墨画を通して多彩な人と出会い、自分の心とも向き合うこととなる。
水墨画の描写はもちろん美しいが、水墨画をとりまく人物描写も美しく、爽やかな青春映画を観たような読後感です。
タイトルが「僕は、線を描く」ではなく、「線は、僕を描く」であること、その意味について深く考えてしまいます。
「水墨は、墨の濃淡、潤渇、肥痩、階調でもって森羅万象を描き出そうとする試みのことだ。その我々が自然というものを理解しようとしなくて、どうやって絵を描けるだろう?心はまず指先に表れるんだよ」
篠田湖山
「水墨というのはね、森羅万象を描く絵画だ」「森羅万象というのは、宇宙のことだ。宇宙とは確かに現象のことだ。現象とは、いまあるこの世界のありのままの現実ということだ。だがね、、、現象とは、外側にしかないものなのか?心の内側に宇宙はないのか?」
篠田湖山
「蘭は、孤独や孤高、そして、俗にまみれずひっそりと花を咲かせていく人物の象徴でもある。翠山先生は青山君に蘭を感じたのね」
篠田千瑛